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地域材での家づくりという物語

陽の栖ネットワーク 小林伸吾氏に聞く

 小林建設は、埼玉県と群馬県の境界に位置する本庄市が本社所在地である。その小林建設が中心となる陽の栖ネットワークは「杉の家」を顧客吸引の中心に据えて、埼玉や群馬の材を壁材に、手加工的プレカット工場とネットワークを形成して家づくりを行っている。
 
 

求められている「物語性」

 年間30棟近く受注する工務店で、営業マンがいない、というのは珍しい。
 営業マンが不在ということは、無理に顧客を追いかけるということはしない、ということだ。むしろ、様々なイベント開催を通じて、顧客との関係性を構築していくことで、自ずから受注が生まれる、そんな仕組みを作り出している。
 だから社長の小林さんは忙しい。様々なイベントを立案し、開催していくからだ。そのイベントコンセプトを、小林さんは「お客さんが自分の家、家づくりにストーリー性を求めているところがある。そのことによって満足度を高める人は結構多いように思う。そういうストーリー性というのは、我々工務店の得意とするところではないか」と語っている。
 施主家族にとっては、世界にたった一つの家づくりである。この家がつくられる過程に豊穰な物語が紡がれるとすれば、顧客の満足度そして共感性が高まるといえる。

 

顧客との関係性づくり

 顧客づくりの基本は完成見学会から。「この見学会で、面白い、素敵、住みやすそう、といった評価をしてくれたお客さんが、基本的に当社のお客になります。何度も見学会に来られる方も多いです」と小林さんは言う。ここが小林建設への入り口でもある。ここからさらに住宅セミナー、森林ツアー、ストックヤード見学、プレカット工場見学といったイベント。そして打ち合わせを重ねてお客と1/50模擬建物を作ったりもする。こうした一連のプログラムを用意しているのだ。
 住宅セミナーではOB施主の家へ行ったり「実際に小林建設の家に住んでいる人」の話を聞く。これに設計手法の勉強会を併せて行う。また「群馬交響楽団」のフリーの方にチェロを演奏していただくなどの余興を30分程取り入れている。小林さんは「ある程度楽しさがないと」というが、一種のカルチャー倶楽部といった形で参加者全てに満足を与える演出を巧みに行っている。
 その基本は「杉の家」。小林建設というと、杉のイメージができている。ハウスメーカーを先にまわってきたお客さんにとってはこちらが安めに感じるようだ。「杉の家」は通常のプレカット料金が他と3倍ぐらい違う。全部現しで、全部モルダー加工して、半分手加工。それでも、手間隙かけただけの家の香りというか風格を生んでいると思う、と小林さんは言う。

 

地域材を使ったデザインの模索

 「県産材だから、国産材だから」といって普通のつくり方をしていれば変わり映えしないし、「強い家」といっても工法で住宅が売れる時代ではなくなってきているので、ある意味では「デザイン性」が求められている。地域材だからこそできるデザイン、見せ方を意識してやらない限りは見向かれないだろう、とずばり材料が主役ではなく、あくまでも住空間を構成する部材であり、設計・デザイン力がなければ競争力にはならない、と明快な答えが返ってくる。
 そうした視点から「最近は、木だらけの家は飽きられていると思う」とその顧客反応の変化に敏感だ。少しだけ現しで、木は抑え気味にという時代ニーズになりつつある。
 小林建設では、選択肢として「無垢の家」「杉の家」「木成りの家」の3つのタイプを用意してあるが、床は無垢、壁は珪藻土というように共通する仕様コンセプトで貫かれている。ビニールクロスは絶対使わない、と小林さん。
 仲間の工務店を見ても、結局、設計力のある人しか残っていない。ニーズに敏感で、それをキャッチして具体的な形と地域材を含めた物語性といった総合的なデザイン力も工務店には必要となっている、ということを実感させてくれるのであった。

 

陽の栖ネットワーク(小林建設)の家づくり

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