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工務店の役割として地域材活用の家づくり

神奈川県木造住宅協会 青木宏之氏に聞く
 
 木造住宅づくり、とりわけ地域材を活用しての家づくりの根幹は大工技能者の存在・育成と経営者の木材知識・活用のノウハウ保持にある。神奈川県大和市の青木工務店の青木宏之氏(現会長)は、かって地域材での家づくり宣言をし、全面的に地域材への切り換えを行ったが、材の乾燥技術の未熟さによってクレームリスクに晒された経験を持つ。
 そして、ようやく青木氏が納得できるような乾燥品質を持つ地域材も登場してきた。やっと工務店が心配なく国産材を活用して、構造材だけでなく、外装材としても活用できるような環境が整った、と氏は言う。この時点で神奈川県木造住宅協会の活動を本格化させ、工務店による地域材活用ネットワークを活性化させている。  


 
 

顧客との関係性づくり

 20年位前は国産材は乾燥してなくベタベタのものしか手に入らなかった。しかし、せっかく国産材が手に入るのだからと「オール国産材宣言」をしたことがある。しかし、結果としてクレームの山となった。そうしたリスクは、結局工務店が背負うこととなる。そのリスクとは、顧客から信頼を失い、クレーム処理のために利益そのものが担保し得なくなる、ということである。
 そうした経験から、工務店として乾燥材を最も早く求めたのも青木さん率いる青木工務店だろう。
 乾燥材を使うということは、大工に求められる技能も実は変化する。材寸に狂いが少なく、プレーナーがかかった乾燥材を使ってみると手刻みの場合、墨付けの能率が全く異なる。例えば、土台材で寸法が決まっていればそのまま墨付けが可能となる。
 軽い、狂わない、墨付けはラクという三拍子揃った材が乾燥材だったのだ。
 こうした経験から青木さんは、木造専門の工務店で生きるためには2つのことが必要だと考える。一つは材料である。これに対する知見と具体的な調達ルートを持たなくては駄目だ、ということ。そして、もう一つが自前の大工を作るということだ。
 自社の標準的な仕様をそこから考えていく。木材の種類や調達、材木をどう刻んでどう加工するか、という構造の部分こそが工務店の仕事である。それなのに木造専門という工務店の多くが、これらを放棄しているように見える。そして、それが地域工務店としての存立基盤を蝕んでいくのではないか、と青木さんは考えている。
 「工務店は構造と材料を他人任せにしては駄目なんですよ」と言う。その理由は、自前性を保持しない限り、住まい手にとって青木工務店を選択した理由は、他の工務店を選択した理由とイコールである可能性も高い。それでは競争力というものが無いにも等しい。いつ他の工務店にとって代わられても不思議はない、ということになる。
 青木さんは、山の木という大切な資源を守ること、山側とそれぞれがそれぞれの役割を担う形で、結果として日本の森林環境をより良くしていくことも、工務店の課題だ、と認識している一人であり、今後そのような方向での家づくりを模索している。
 そのことを顧客にも青木工務店のポリシー宣言という形で伝えはじめている。工務店で材木に詳しい人が減っていることも、地域材環境を考えた場合杞憂の一 つと青木さんは言う。例えばスギの板を白太で揃えようとしたら幅は10p以下、できれば9p以下にすれば見事な材料が高くなく揃うが、それを12pにした ら赤白になってしまうということが、やっていないから意外とわからない。その意味で、地域材を主体的に活用しうる工務店の連携的なネットワークづくりも必 要だと考えているようだ。   

外壁への国産材活用

 地域材生産はこれまで構造材中心であった。しかし、今後は辺材活用も含めて脱構造材の時代への対応が工務店として求められている。しかも、ストック管理の仕事も工務店として大切な部分だ。この部分での地域材活用として、外壁リフォームでの地域材活用。さらには新築でも地域材を外壁材としてどう活用するか、その技術的な検証も含めて対応を重ねている。青木さんが理事長を務める協同組合「SAREX」のメンバー工務店との連携という形で、木外壁の耐火仕様の検討を進め、地域工務店の地域材活用の役割をもう一歩高めること、このことを考えている。

神奈川県木造住宅協会(青木工務店)の家づくり

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