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多産地連携による家づくり

吉野の杜ネットワーク 福井綱吉氏に聞く
 
 納得のいく素材で納得のいく「家づくり」をしたい、というのが吉野の杜ネットワークの中心であるケイ・ジェイ・ワークス代表の福井綱吉さんの信念でもある。
 自らの目で見て、自らの厳選性を顧客に対して訴える。…とすると、自ずから様々な山を見て歩くこととなる。するとその素材を家づくりに活かしたいという欲求がふつふつと湧いてきて、こうなると多産地との連携を自ら切り開く必要が出てくる。
 こうして、スギ、ヒノキを中心として吉野、小国等産地製材や森林組合とのネットワーク作りを行いながら産地別の住宅シリーズを構想することとなる。
 その拠点として「木想館」という展示場兼事務所も開設した。地域の住まい手に木材知識を中心に啓蒙するための地域材情報の発信を行っている。


 
 

木材産地との連携

 「家具屋の感覚での家づくり」という一見奇妙なリードを使う工務店である。実は、代表の福井綱吉さんは家具デザイナーだった。オリジナル家具づくりは素材が大きな意味を持つ。さらにその打ち合わせも含めて制作過程は繊細を極める。
 そうした家づくりこそが必要なのではないか、という思いから家づくりを開始する。素材の持つ力を存分に活用するノウハウを「木の家」として充実させたいと考えていくと、地域材の持つテイストが極めて魅力的に見えてくる。そうした家づくりを「木想家」と名付け、地域材での家づくりを開始したのはもう10年以上前になる。
 「最初は丹波(兵庫)。その後、美作(岡山県)、吉野(奈良県)、土佐(高知県)と歩き直接材を仕入れていきました。その後、信州の製材工場を訪問したのがきっかけで信州カラマツ」と産地連携を進める。山側とのネットワークを自力で展開してきたのだ。
 平成17年に、ケイ・ジェイ・ワークスの事務所兼展示場としての「彩都暮らしのギャラリー木想館」がつくられた。これを機に新たな質のよい材を活用したいと考え熊本の小国町との連携を決めた、という。
 「木想館」では、木材を単に材として集積展示するのではなく、家具屋の感覚の家づくりを売りに、オリジナルシステムキッチンやテーブルなども提案している。
 「既存の流通活用は殆どなく、支払いは製材屋からの請求で現金払い。都度発注だが、原木は入れているので、我が社の前年度の統計からある程度予測して加工してくれている」という。まさに工務店自らが構築したネットワークらしい特性を持っていることに気付く。
 乾燥品質などの要求も高く、品質評価だけではなく、産地の姿勢も問うていくのが福井流でもある。

 

産地を巻き込んだイベントの仕掛け

 ケイ・ジェイ・ワークスは産地とのネットワークを活用した森林バスツアー等はもちろん実施している。ここで大切なことは、参加者に対して、山側もまた「ようこそ」という迎え方をすることだ。そして、消費者がどのような住まいを望み、自分たちの製品に対してどのような期待をしているのかを具体的に知るチャンスを得ている、ということである。こうした具体的な消費者との接点を持ち得ることがネットワークの存立を支える。山側も学ぶということだ。
 ケイ・ジェイ・ワークスは、その他に日曜市という形の林産地フェアも実施している。それぞれの産地が年2回づつ。さらに家具の関係で旭川も年2回。地域の木材や産品を持参して「木想館」ならではのイベントを展開し、地域の住まい手に「木の家」づくりの楽しさ、地域材の品質などを広く発信している。その集客を担うのが、40万部位発行しているミニコミ誌への広告出稿であり、ホームページと福井さんの名物ブログだ。
 さらに、施主も家づくりを楽しもう、という趣旨から左官教室を開催したり「自宅の壁塗りや家具へのワックスがけをやっていただくかわりに、机やテーブルをプレゼントする」といった形で、施主との共感性を高める家づくりを地域材を足掛かりに展開している。

 

吉野の杜ネットワーク(ケイ・ジェイ・ワークス)の家づくり

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